私たち「NPO法人 森と家を結ぶ会」は、“木の家に住みたいと思う人”と“森”との距離を縮めることで、国産材の需要が広がり、森を元気に出来るものと考えます。様々なイベントを通して、森の現状、製材、国産材を生かした住宅をご紹介することで、一人でも多くの人に国産材を生かした家にお住みいただく事が、私たちの想いです。
今ここに、私たちが森と家を結ぶ礎となることを宣言いたします。

森林のさまざまな機能

日本の森林面積は国土の約70%を占めています。その森林が私たちの生活にとって非常に重要な働きをしてくれています

二酸化炭素の吸収

樹木の成長には二酸化炭素が必要です。根から吸い上げた水分と葉から吸収した二酸化炭素で炭水化物をつくり、それを元に化合物をつくって幹や枝や葉などを形成していくのです。樹木は腐ったり燃やしてしまったりしない限りは、その体内に炭素を蓄えてくれるので、大気中の二酸化炭素を減らす働きをしてくれていると言えるでしょう。同時に生命が必要とする酸素もつくり出して空気中に放出してくれます。

水を溜めてきれいに

森林の地表面には落葉・落枝や動植物の死骸があり、それをミミズや微生物が分解して有機物となります。この有機物同士がくっつき小さな隙間をつくっています。この隙間の他、樹木の根と土の間、根が腐ってできた穴、動物の通り道など無数の穴があり、その中に降った雨を一時的に溜めてくれます。溜まった水の一部は蒸発し、一部は樹木に吸い上げられ、残りは地下に浸透していきます。このとき、無数の隙間を通過することで不純物が取り除かれて澄んだ水をつくってくれます。

洪水を防ぐ

森林に降った雨の一部は樹木の枝葉に付着して地面に届かないまま蒸発します。さらに前述の貯水機能も加わって河川に一気に水が流出することが無く、洪水の発生を未然に防いでくれているのです。

土砂崩れを防ぐ

森林は落葉や草などがあるため地面に雨水が直接当たることがなく、地表が侵食されにくくなっています。また、樹木の根が地中に張りめぐらされていることで土砂崩れが起きにくくなっています。

動物にエネルギー源を与えてくれる

植物は唯一、自らの成長に必要なエネルギー源をつくり出すことができます。動物はその植物を食べ、またはさらにその動物を食べてエネルギーを得ています。私たちの生活もこの食物連鎖の一部であることに他なりません。

癒しの効果

森林に入って何となく気持ちよく感じた経験があると思います。これは樹木が発散する「フィトンチッド」の作用であると言われています。フィトンチッドとはその場から動けない植物が外敵を追い払う目的で分泌されるものです。森林に漂うフィトンチッドは、人体の神経系に薬として作用し、興奮を抑えてリラックス状態にしてくれるのです。また、森林に入り込むと鳥のさえずりや小川のせせらぎなど自然の発する音が聞こえてきます。これらは「f分の1のゆらぎ」と言われる不規則なリズムを持っていて、人間の心拍や脳波の中にもこのリズムがあります。同じリズムを感じることでやはりリラックス状態になれるのです。

森林の抱える問題

今、森林がその機能を発揮できない状態になっています。

木材利用の減少

戦後の拡大造林政策によって造林された人工林の樹木が成長して伐期を迎えています。しかし、木材の需要減少や輸入材の増加などによって伐っても資源としての価値が低くなるため、その多くが手を付けられない状況です。二酸化炭素の吸収量は樹齢50~60年でピークとなり、100年を超えるとその機能はほとんど無くなると言われています。このままでは二酸化炭素を吸収しない樹木ばかりの森林になってしまうのです。十分に成長した樹木は資源として活用し、新たに植林した若い木を育てて二酸化炭素の吸収量を増やす必要があります。資源が豊富にありながら31.6%(※)を割り込んでいる木材自給率を上げる努力が求められています。 ※)林野庁:森林・林業白書(平成30年版)より

森林の荒廃

森林がさまざまな機能を発揮するためには樹木が成育しやすい環境を整える必要があります。「下草狩り」「枝打ち」「間伐」などの作業がそれに当たりますが、木材価格の低迷などで管理コストが回収できず、また、林業就業者の減少や高齢化などによって管理の行き届かない荒れた森林が増加しています。荒れた森林では樹木は密集しているため十分に育たず、風雪によって倒木などの被害を受けやすくなります。また、光が地表に差し込まないことで草が生えなくなるので雨によって地面が侵食され、土砂災害が起きやすくなります。さらには豊富な貯水効果も機能しないことで一気に河川に水が流れ込み、下流域で洪水などの被害が発生してしまいます。